5限が終わって、短い休み時間。

 保健室の戸を開けると、エアコンの涼しい風が流れてくる。

 中に入ると、電話中の保健医の隅田が俺に気付いてカーテンを指差した。


「神宮」


 そっと捲って中に入ると、こっちに背を向けてベッドに横たわる神宮がいる。


「生きてるかー?」


 軽く声を掛けると、少し頭が動いて目だけが俺を見上げた。

 眼鏡の無い顔は、いつもの鋭さが感じられない。


「クソ暑い中烏龍茶なんか飲んでっから熱中症とか脱水症状になるんだよ」

「…………」

「でもまぁ……、屋上に誘ったの俺だかんな。悪かったと思ってるよ」

「…………」

「おい、聞いてんのか?」


 ふい、と反らされる視線に、俺は溜め息を1つ。

 ベッドの端に腰を掛けたところで、隅田が顔を覗かせた。


「俺、職員室に行くから席を外すよ。あ、神宮君はまだ寝ててもいいけど、高槻君は教室に戻ること。いいね」


 適当に返事をすると、程なくして保健室が無音になる。

 心地良い涼しさに、いつの間にか汗が引いていた。