俺を無視して、神宮は壁に手を伝わせて歩いていく。

 調子悪いんなら素直にそう言えばいいのに。

 やせ我慢しちゃって可愛くねぇの。

 そんな風に思って神宮の後について歩き出す。

 俺がヘコませたあの鉄扉を抜けて階段に差し掛かった時だ。

 突然、神宮の身体がグラリと揺れた――


「――神宮っ!」


 階段から足を踏み外す瞬間に、どうにかその身体を引き止めることが出来た。

 そのまま階段の一番上で神宮を抱きかかえる様に座り込んだ俺は、一先ず安堵の息を吐く。

 一瞬の出来事に、俺の心臓がバクバクと煩い。


「おま……っ、危ねーだろっ!」

「……ありが、とう」


 素直に礼を言われるとは思ってなかっただけに、これは――クる。


「……大丈夫か?」


 妙な動悸を感じながら、俺はそっと神宮の表情を窺った。

 青白い顔をした神宮が、口元を押さえる。


「――……ごめん、凄く、気分が悪い」

「指先、痺れてんじゃねーの?」

「え? うん……」

「お前、次からは烏龍茶じゃなくてスポーツドリンク飲めよ」

「ん……?」

「……なんでもねーよ。おら、保健室行くぞ」


 本当は抱えるなり背負って行きたいところだけど、プライドの高い神宮は絶対拒絶するだろうから、肩を貸して保健室を目指した。