「ねぇ、それは俺のなんだけど」


 ソレ、ってのは、俺が取り上げた烏龍茶のペットボトル。

 中身は半分より少ない。


「いいじゃん。俺のカラなんだよ」


 手にした烏龍茶ボトルをコンクリートに置いて、空になった炭酸飲料のボトルを横に並べる。

 つか、このクソ暑い時によく茶なんか飲めるよな。

 まぁ、神宮のを横取りした俺が言えることじゃねぇけど。

 塩分とか糖分とかもっと摂れよっつっても、どうせ『余計なお世話』とかって言われるだけなんだろうな。


「食中毒になるよ」

「なんだよそれ」

「もういいよ。それは君にあげるから」


 昼休み入ってからずっとこの調子だ。

 朝は普通だったんだけどな。

 つか、食中毒って……俺は病原菌か何かかよ!?


「お前、何カリカリしてんの? 生理前の女みてぇ」

「……下らないこと言うの、やめてくれる」


 適当に返事をして、俺は烏龍茶を飲み干した。

 それにしたって、暑い。

 夏なんだから仕方ないんだけど、教室も、廊下も、どこもみんな暑い。

 涼しいのは職員室と特別教室と図書室くらいだろう。