「高槻と神宮って、ケンカでもしてたの?」


 ある昼休み。

 さわやかな笑顔の堤が、突然話し掛けてきた。

 取って付けたような笑みが、やっぱウザイ。


「喧嘩って訳でもねぇけど……ちょっとな」


 あの日。

 神宮にちゃんと謝れたあの日以来、俺に対する神宮の態度が少し変わったように思う。

 相変わらず、視線は冷たいけど。


「知ってる?」


 欠伸をかみ殺す俺に、堤はまだ話し掛けてくる。


「何をだよ」

「神宮、陰で"女王様"とか言われてるんだよ」

「…………」


 俺もそれ、思ったことがある。

 アイツの冷たい口調とか、人を小バカにする態度とか。

 それに付け加えて、美人系の女顔。

 男に言う言葉じゃないけど、不思議と"女王様"って言葉がぴったりだ。