「変なこと言って悪かった。ごめんな」


 吐き捨てるように言ってしまったが、言えたという達成感に心が急速に軽なったのを感じる。


「……君は、本当に変わってるね」


 ぱたん、と本を閉じる音がした。

 視線を神宮に戻すと、表情が和らいでいる。


「馬鹿正直っていうの?」

「な……っ」

「褒めてるんだよ」


 そう言いながら、神宮ははにかむようにそっと笑った。

 その顔を見た瞬間、今まで感じたことの無い、何か。

 例えるなら、高跳びで記録を出せたあの時の感覚。

 達成感と、沸き起こる歓喜。

 言葉では言い表せない特別な感情が、俺を包んでいた。