「うわ……言っちゃったんだ?」


 その日の夜。咲都の手料理を食べながら、俺は昨日の事を話した。

 思った通り咲都は、『それはダメだと思うよ』って、苦笑いだ。

 傷口に塩を塗るようなものだ、って。

 俺だって一人でずっと考えてたんだ。

 頭冷やして冷静になれば、俺が勝手に苛々してるだけだって気付いたし。

 ただの八つ当たりだ、って、今は反省してる。

 でも、どうしたらいいのかは全然分からないままだ。


「前置き無しに、謝っちゃえばいいんじゃないの?」

「どういう意味だよ」


 グラスの水を飲み干した俺は、さらりとそんなことを言う咲都の考えが分からずに聞き返した。


「改まって話し掛けるからダメなんだよ。神宮くんが何か言う前に、さっさと謝っちゃえばいいんだよ」

「簡単に言うなよ」

「簡単なことだよ。彰那って案外カッコつけだもんね。謝ることはカッコ悪くないよ」

「うるせぇよ。そんなん分かってるよ」

「じゃあ、明日の朝イチで謝っておきなよ」

「何で朝イチなんだよ」

「時間が経ったら、彰那はあれこれ考えちゃうでしょ」


 さすがは幼馴染み。

 俺の癖とか、どうでもいいことまで憶えられてる。

 でもそれが、救いになったりする事だってあるんだ。


 朝イチ……か。


 改めて考えると、何て言えばいいのか、物凄く迷う。

 でもそれだと意味がない。

 何も考えずに、ただ、謝るだけ。

 それだけだ。