「誰に対しても素っ気ないみたいだから、頑張ってね」

「……何を頑張れって?」

「みなまでは言えないよ」

「俺をそこら辺のヤツらと一緒にすんな」

「なんだ。違うんだ?」


 コイツ……勝手なこと言いやがって。

 案外イイ性格してんだな。

 さわやかな顔に騙されてたぜ。


 気持ち悪いくらいさわやかな笑顔を浮かべる堤がくるりと背を向けるのと同時に、予鈴が鳴った。

 椅子の背に凭れて何気なく神宮の方を見てみると、本を読む横顔が見える。

 教科書……じゃないな。

 何か、ハードカバーの本。


 入学してから約2ヶ月。

 2ヶ月も同じクラスに居るのに、俺は神宮という存在に気付きもしなかった。

 部活、部活、の毎日で、自分に余裕なんて無かった。

 授業中に寝て、部活でクタクタになるまで練習して、オフの日は遊び仲間と集まって……。

 俺、何しにガッコー来てんだろ。


 考えるのも面倒になってきた俺は、欠伸をひとつして机に突っ伏した。


「こら高槻! 寝てるんじゃない!!」


 いつの間にか来ていた担任の声が飛んでくる。

 聞こえないフリして無視してたら、わざわざ俺んとこまで来て頭を小突かれた。


「お前は何しに学校に来てるんだ」

「なんだろう……」


 自問したことを担任にまで言われて、ホント、訳わかんなくなる。


「一時限終わったら職員室に来いよ」


 適当に返事をして、俺は窓の向こうに視線を送った。