自分の席――窓際の最後列というラッキーな席に着いた俺は、伸びてきた金色の前髪を指先で捻りながら、黒板の上の時計に目をやる。

 HRが始まるまで後10分というところ。

 休み時間になったら神宮に話し掛けてみよう、とか、そんな事を考えていたら、前の席のヤツが話し掛けてきた。

 俺と同じくスポーツ特待生として入ってきたソイツの名前は堤[ツツミ]。

 野球部に所属してる堤は、さわやかな坊主頭……もとい、スポーツ刈りの頭が印象的なヤツだ。

 頭の形がキレイなんだと思う。


「高槻って、神宮と仲良いの?」


 思いもよらない質問に、俺は思わず間抜けな声を出す。

 俺が神宮に話し掛けていたのを見ていたのだろう。


「昨日初めて話したから、仲良いって訳でもねぇけど」

「そうなんだ。アイツ、中間で一番だったし、普段あまり喋ってるのも見たこと無いし、見た目からしても優等生って感じでしょ。近寄りがたいオーラがあるよね」


 アイツ、周りからはそう思われてるのか。

 つい最近まで神宮の事なんて気にしたことも無かった俺は、そんな先入観さえ抱いて無かった。

 というより、神宮の存在自体、無いも同然だった。