「そういえば」


 握手を解いた神宮が、俺に視線を合わせてくる。

 眼鏡の奥の瞳は、やっぱり冷ややかだ。

 それでも不思議と、惹き付けられるような何かを感じる。

 目ヂカラってヤツ?


「先生が君を探していたよ」

「あ! やべぇ……」


 担任のトコ行くの忘れてた!!


「咲都、またな!」


 人だかりに咲都と神宮を残して、俺は廊下を走り出した。


 怪我をしてから約2週間。

 膝の痛みは、大分薄れていた。

 日常生活に、何ら問題はない。

 けど、思い切り走るのが怖かったり、足に強い衝撃を受ける様なことをするのは意識的に避けていた。

 俺はまだ、あの日のことを確実に引きずっている。