そうして迎えた、更に翌日の朝。

 パンを焼く香ばしい香りに目が覚めた。

 部屋を出ると、直ぐ脇にあるキッチンに、エプロンをした咲都が立っている。


「……おはよ」


 恐る恐る声を掛けると、ばつの悪そうな顔をした咲都がこっちを向いた。


「おはよ、彰那。……あの、一昨日は、ごめん。言い過ぎた」

「え、ああ……うん」

「辛いのは、彰那だって分かってたんだけど……僕も、ショックで……」


 思い出してまた泣きそうになっている咲都を慌ててなだめた俺は、照れくさいけど、「ありがとう」って、告げた。

 俺がそんなことを言うなんて思っていなかったのか、咲都はきょとんとしている。


「いや、なんつーの? お前がそんな風に思ってたの、知らなかったから、さ。心配させたし、それに……勝手に決めて、悪かったな」

「彰那……」

「メシ食って、学校行こうぜ」

「うん」


 1日半振りの咲都の手料理が、無性に懐かしく感じられた。