咲都の気持ちも、分からなくはないんだ。

 でも俺は、決めたから。


 陸上部には戻らない。


 高跳びをしない俺に何が残るかなんて分からないけど、周りの期待に押されるだけの自分はもう嫌なんだ。


「咲都」


 閉ざされた扉に向かって、声を掛ける。

 咲都とは、ちゃんと話し合いたいんだ。

 けど、中から返事は無くて。

 だから、この日の夜も俺は学食に向かった。