――辞める。


 医者から話を聞いて、そう決めたんだ。

 寮に帰る車の中で、顧問に告げた。


 今の咲都みたいに、目を見開いて。

 俺のこと、怒鳴った。


 諦めるな、とか。

 一緒に頑張ろう、とか。

 お前なら出来る、とか。


 なんで、そんなこと簡単に言うんだよ。


 わかんねーよ。


 だって、俺は。

 今まで通りには、出来ないんだ。

 期待に応えることは、出来ない。


 今は、足を着くことさえ、怖く感じる。

 一歩を踏み出した瞬間に、あの時の痛みが蘇る気がするんだ。

 そうなったら、二度と歩けなくなるんじゃないかって、思ってしまう。


 勿論、そんなことは無いって、分かっているけど。


 ――俺、こんなに臆病だったっけ……。