顧問の車に乗せられて寮に戻ってくると、夕食時間はとっくに過ぎていた。

 松葉杖を突いて歩く俺の姿が余程珍しいんだろう。

 そこらじゅうから視線を感じる。

 見んじゃねーよ、って感情に任せて怒鳴り散らしてやりたかったけど、そんな気力……ねぇよ。


 廊下にいる奴らの視線が、痛い。


 それ以上に痛む膝を引き摺って、俺は部屋の扉を開けた。


「彰那っ!」


 まるで、俺が入ってくるのが分かっていたかの様に、咲都が駆け寄ってくる。


「彰那、大丈夫!?」


 何でお前が、泣きそうな面してんだよ。


「病院に行ったって聞いて、僕……ずっと心配だったんだから!」


 俺の上着の裾を掴む咲都の手が震えてる。

 だからさ、何でお前がそこまで悲しんでるワケ?

 怪我したのは俺で、咲都じゃないだろ!