「──ねぇ、少し落ち着きなよ」


 神宮の手が、俺の背中を叩く。


 なんでお前はそんなに冷静なんだよ。

 あんな得体の知れないヤツに突然抱き締められて、何も思わないのか?


「君の気持ちも分からないでもないけど。俺の気持ち、無視しないでくれる?」


 神宮の、気持ち?


「なんだよ」

「……今まであまり気にしたことなかったけど」


 ふい、と神宮は俺から視線を外した。

 こういう仕草をする時は、大抵話を反らしてくる。


「感極まった時以外に男に抱き着かれるのは、暑苦しいだけだね」


 突き放すような言い方に俺が腕の力を弱めると、神宮は言葉を付け足した。