──なんだったんだ、アイツはっ!?


 抑えきれない怒りを覚えつつ、俺は神宮を部屋に引っ張り込むなり、強く抱き締める。

 こんなことしたら神宮に怒られるかと思っていたけど、さすがに今回は俺の気持ちを察したみたいだ。

 腕の中で大人しくしてる。

 いや、大人しくしていること自体が珍しいから、後で無視されるかも知れねぇけど。


「……暑苦しいんだけど」

「もうちょい黙ってろ」


 咲都の友達だからって油断してた。

 イキナリ神宮に抱き付くとか有り得ねぇだろ!


 ほんの数分前まで、兵藤とかいうヤツが部屋に来ていた。

 咲都が部屋に友達を連れてくるなんて初めてだったから、何だか、ちょっと嬉しかったんだ。

 転校生だっていうから、仲良くしてやらないでもないと思っていた矢先──気付いたら、兵藤が神宮に抱き付いていたんだ。

 なんでそんなことになったのかなんて一部始終を見ていない俺には分からない。

 でもその後で、珍しく咲都がキレてヤツを部屋から追い出した。

 心の中でガッツポーズをしたのは言うまでもない。