「高槻……」


 小さな声と同時に、Tシャツの裾を引かれた。

 俺の肩口に額を付けたままの神宮の背中を撫でながら、なんだよ、と小さく返事を返す。


「俺に……会いたかった?」

「……っ、当たり前だろ!」


 会いたかった、だなんて、神宮がそんなこと言うなんて思わなかった。

 俺が思わず声を張り上げてしまうと、神宮は小さく笑いながら「そっか」って呟いた。


「会いたい、って、思っちゃ悪いかよ」

「ううん。高槻は、悪くないよ。悪いのは、俺だから……」


 妙にしおらしく話す神宮は、俺の方を絶対に見ようとしなかった。

 表情ごと隠して、ぎゅ、と俺のシャツを両手で掴んでくる。


「神宮、こっち向けって」

「嫌だ。今は、駄目」

「いいから」


 無理矢理顔を上げさせたら、眼鏡の奥の瞳に涙が溜まっていた。