「──ねぇ、彰那。まさかとは思うけど、宿題終わってないとか言わないよね?」


 夏休みはあっという間に過ぎ去り、今日は8月30日。

 ベッドに寝転んでマンガを読んでたら、勝手に部屋に入ってきた咲都が厳しい顔付きで言い放った。


「咲都は終わったのかよ」

「当たり前でしょ」

「じゃあ、写させろ」

「やっぱり……」


 あからさまに肩を落とす咲都は、腕を組んで俺を睨み付けている。

 咲都に睨まれても怖くなんてないけど、機嫌を損ねると良いことなんてない。


「彰那はただでさえ成績悪いんだから、課題くらいちゃんと提出しなよね! 神宮くんと一緒に進級できなくなっても知らないよ」

「何でそこに神宮が出てくるんだよ」

「折角仲良くなった友達は大事にしなきゃ!」


 友達、って言葉に違和感を感じつつも、咲都の言う通り、留年なんてしたら神宮と一緒に居られなくなる。

 それは……嫌、だな。

 なんか、俺って単純?


「そういえば」


 部屋から出ていこうとした咲都が振り返って──


「神宮くん、寮に帰ってたね」


 ──ええっ!?


「それ、いつだ!?」

「えーと……お昼過ぎ、だったかな……って、彰那!?」

「ちょっと行ってくる!」


 咲都の話もそこそこに、俺は部屋を飛び出した。