「神宮って、帰省組? 実家ってどこ?」

「……知るかよ」

「何で知らないの?」

「知らねぇもんは知らねぇんだよ」


 答えるのが面倒くさくてシラを切ってるようにでも思われたんだろうか。

 何度もしつこく聞いてくる堤が、マジでウザい。

 本気で苛ついてきた。


「神宮と仲良いの高槻じゃん。本当に神宮から何も聞いてないの?」

「──神宮、神宮って煩ぇよ! 何でもかんでも俺に聞くな!!」


 昂る感情に任せて机を蹴り飛ばした俺は、クラス中の視線が突き刺さる中、呼び止める堤の声を無視して教室を出ていった。

 何気なく足が向いたのは屋上で、夏のギラつく陽射しを浴びながら、ポケットの煙草を取り出す。

 一本咥えて、風すら吹かない灼熱の空間に煙を吐き出した。