「お前には期待してるんだから、怪我とかやめてくれよな。マネージャーにアイシングの準備させておくから、無理するんじゃないぞ」

「おう」

「おう、じゃないだろ」


 言って先生は、軽く俺を小突いてくる。

 笑ってごまかした俺は、何度か屈伸して筋を伸ばしてみた。

 変な痛みでは、無いと思う。

 取り敢えず、1回跳んで様子を見てみよう。

 そう決めた俺は、順番待ちをしてるヤツらの後ろに着いた。

 バーを軽々跳んでいくヤツらを見ている内に、俺の番がやってくる。

 深呼吸して、少し先にあるバーを見据えた。


 助走を付けて、軸足で踏み切って跳び上が――……った、筈だった。


 バーを越えることなくマットの上に倒れ込んだ俺は、再び右膝を襲った痛みに――悶える。


「――……痛ぅっ! う、あぁ……っ!」


 なんだ、これ。


 マットに倒れた衝撃も。

 下敷きにしたバーに打ち付けた肩の痛みも。

 簡単に薄れていく。


 なのに。


 膝だけが、悲鳴をあげる。


 俺、跳ばなきゃなんねーのに。

 記録、出さなきゃなんねーのに。


 ホント。

 何なんだよ、これ……。