「──は? 帰った?」


 今の俺は、相当間抜けな顔をしているだろう。

 神宮の部屋の前に立って、神宮と同室の坂井を目の前にして、俺はもう一度聞いた。


「帰ったって、どこにだよ?」

「そんなの実家に決まってるじゃないか」


 当たり前過ぎる答えに、俺は仕方なく自室へと戻った。

 つーか、神宮の実家って何処だよ。

 帰るなら、帰るって一言くらい言って行けってんだ!


 むしゃくしゃしながら部屋の扉を開けると、エプロン姿の咲都がパタパタと寄ってきた。


「神宮くん、夕ご飯どうするって?」


 咲都の提案で、神宮を夕飯に誘おうとしていたんだ。

 そうしたら……。


「帰った」

「え?」

「実家に帰った」

「そうなんだ。夏休み初日から帰る人もいるんだね」