約束した時間が近付いて部屋を出て行くと、寮の玄関で神宮に会った。


「よ、神宮。元気そうだな」


 目元の腫れも無くなって、顔色も良い。

 眼鏡がないことを除けばいつもの神宮だ、と思った瞬間。


「……おはよう」


 ぽつりと呟いた神宮は急いで俺から視線を外した。


 俺、何かやったっけ?

 周りには誰もいないし、俺の格好だって、別に変なところは……無いと思う。


「神宮? どうかしたか?」

「別に……っ、何でもないよ」


 いやいや、何でもないってことは無いだろ。

 明らかにおかしい。

 挙動不審になってる。

 昨日の今日で、やっぱり調子悪いかな……。


 気になって、神宮の額に手を当ててみる。

 特別熱くは、ない。