「放せよ」


 俺の手を払い除けるソイツは、少し伸びた襟元をさすって俺から離れていく。


 ……くそ。

 絡んで来たのはアイツらなのに。


 腑に落ちない思いを抱えて、俺は遠ざかる背中を睨み続けてた。

 程なくして、顧問のヤローが俺の所にやって来るなり盛大な溜息を吐く。


「高槻、頼むからモメ事は起こさないでくれよ」

「俺が悪いって言うのかよ」

「今のはどう見てもお前だろう。それと、その金髪とカラコン! 髪は黒くしてこいって言っただろ」

「煩ぇよ。こんなん俺の勝手だろ」


 ふて腐れながら顧問と言い合ってると、靴紐が解けていることに気付いた。

 俺の視線に顧問も気付いて、「それ直したらグラウンド10周な」と渋々といった感じでまた溜息を吐いて戻っていく。

 グラウンド10周くらい、何てことはない。

 一々煩いヤツらと居るよりは、1人で走ってる方が全然マシだ。