「あ、おかえりー……って、汚っ!? 彰那どうしたの?」


 狭い台所から顔を覗かせた咲都が、部屋に帰り着いた俺を見るなり嫌な顔をする。

 俺のジャージは、埃と錆とですっかり汚れてしまっていた。


「……ちょっとな」

「また喧嘩でもしたの? そのTシャツの汚れ、何だか分からないけど、早く洗わないと落ちなくなるよ?」


 俺は咲都に軽く返事をして、玄関から近い自室の戸を開く。


「彰那! そのままベッドに倒れ込んじゃダメだよ! シャワー浴びてからにしなよねっ!」


 重い足取りの俺を見て、疲れているんだと思ったんだろう。

 確かに、ベッドに倒れたい気分だ。

 でも、疲れている訳じゃない。

 頭から、神宮の事が離れないんだ。

 神宮のことが、気になる。

 今もベッドの上で小さくなっているのかと思うと……心配で堪らない。

 胸の辺りがざわついて、気持ち悪い。