蜜月 -love is blind-【BL】

「ほんと、ごめん……!」


 俺は、神宮の背中に向かって何度も頭を下げた。

 謝罪の言葉を繰り返して。

 神宮が何か、言ってくれるまで。


「お前の気が済むまで、俺のこと殴ったっていいから……」

「……殴る事に、……何の意味があるの」

「……っ!」


 聞き逃してしまいそうなくらい小さな声で、神宮がやっと口を利いてくれた。


「お前の苛々を、俺にぶつけてくれていいよ」

「別に、苛ついてなんかいないよ……」

「そうなのか!? じゃあ、何で今まで口利いてくれなかったんだよ」


 つい、強い口調で言ってしまった。

 折角口利いてくれたってのに……。


「……色々、考えてた」

「そっか、でもまぁ、なんつーか……うん。迷惑掛けて、ホント悪かった! お前も、なんか……思ったより元気そうで安心した」

「……高槻は、悪くないよ」

「……え?」


 相変わらず俺に背を向けたまま、神宮がぼそぼそと喋る。


「あの人、高槻の事、好き勝手に悪く言って……。俺の事じゃないのに、無性に腹が立ったよ」


 あの時と、同じだ。

 先生に俺が悪く言われた時と同じに、神宮は俺の事で怒ってくれたんだ。


 ちょ……、嬉しいとか思っちまう俺は正真正銘のバカか!?