蜜月 -love is blind-【BL】

 ――そして、今に至る訳で。


 沈黙に困った俺は、壊してしまった眼鏡の事を思い出した。


「お前の眼鏡……弁償する、っていうか、させて欲しいんだけど……。つか、予備のヤツとかあんのか? 見えないと大変だろ?」


 壊してしまった眼鏡は、神宮の机の上に置いてある。

 片方のレンズは外れて無いし、もう片方にはヒビが入っている。

 勿論、フレームはガタガタに変形してる。

 直すより、買った方が確実だよな。


「……神宮?」


 無反応の背中に、呼び掛ける。

 多分聞いてはいるだろうから、とにかく話し掛けてみるしかない。


「今日は、その……悪かったな。アイツ、陸上部の先輩なんだ」


 弁解するつもりで話してる訳じゃない。


「前から何かと絡んできやがってさ、俺が部を辞めたのが気に入らねぇらしくて……」


 ただ、俺は……。


「お前全然関係ねぇのに、巻き込んでごめんな」


 神宮に、謝りたい。

 謝って済むことじゃないのは分かってる。

 許して貰いたい訳じゃないんだ。

 神宮と、ちゃんと向き合いたい。