『彰那[アキナ]! 一体今どこにいるんだよっ!?』


 携帯を耳に当てた途端、咲都[サキト]の怒鳴り声が耳をつんざく。


『何時だと思ってるの!? 門限とっくに過ぎてるよっ!!』

「あー、うん。分かってるってぇ」


 それだけ言って、俺はさっさとホールドボタンを押した。

 四月の夜風は、酒を飲んで火照った身体には気持ちが良い。

 花が散って葉桜になり始めている桜の木が、風に揺らいでいる。

 まだ見慣れない町並みを横目に、俺は寮へと足を進めた。