加納欄の奪還 シリーズ25

今のあたしには、向こうからの連絡を待つしかないのだ。

何か打つ手があればいいけど、祥子さんの命がかかっている。

盗聴器もついたままだ、半径どのくらいの盗聴かは、わからないが、あたしの声が聞こえなくなったら、祥子さんに、危害を加えると言っていた。

「なに不細工顔になってんだよ」

朝から、1番会いたくない人に、声をかけられた。

高遠先輩だった。

「も、元々ですよ」

目を合わせるのが辛かった。


トゥルルルル♪


と、突然の電話の音に、心臓が高鳴った。

「はい、南署」

電話に出たのは、吉井さんだった。

「もう一度、ゆっくり言ってくれませんか?」

吉井さんの、緊張した声が聞こえてきた。


来たっ!?


あたしは、思惑立ち上がった。

高遠先輩は、そんなあたしを見て、そして吉井さんを見た。

吉井さんは、電話をスピーカー音に、切り替えた。

「オタクの女刑事さん、預かってるよ」

スピーカー音から、聞こえた瞬間に、高遠先輩が、声を張り上げた。

「誰だ!」

相変わらず、感は鋭い人だった。

「アンタこそ誰?態度悪いと、美人刑事さん返さないよ。そこにさ、加納欄っているよね」

皆が一斉に、あたしを見た。

「今預かってる刑事と、加納刑事の交換が、美人刑事さんの命を保証する条件。悪い取引じゃないでしょ?交換場所はまた連絡するよ。加納さん、聞いてる?言った通りに動かなかったんだ。もしかして、盗聴器が気になってたの?スタンガンであんたの首に押し付けた時に、盗聴器なんて、とっくに壊れちゃってるよ。じゃ、また後で」

電話は、勝手に切れた。

切れた後の電話を、しばらく皆が呆然と見ていた。


何か、言わなきゃ。


「あ、あの」

話し始めた途端に、高遠先輩の容赦ない平手打ちが、あたしの右頬に飛んできた。

「何やってんだ!!」

あまりの迫力に、あたしの体が、近くのデスクに叩きつけられた。

間髪入れずに、高遠先輩は、あたしの腕を掴んできた。

「タカ!やめろっ!」

「高遠!おいっ!」

「高遠先輩!何やってんすか!」