加納欄の奪還 シリーズ25

!!!


「いいですね」

そして師範は、あたしから離れた。


伴侶……?


あたしは、呆然と師範を見つめた。

「しばらくは、日本にいますが1度中国に戻ります。欄、たまには顔見せてくださいね。お前の笑った顔を最近見てなくて寂しいです」

と言うと、あたしのオデコに軽くキスすると、アモンに命じて、車椅子を引かせると、倉庫を出て行った。

あたしは、その場に、座り込んだまま、まだ何が起きたのかわからない状態だった。


「よろしいんですか?嘘をついて、大事な片腕に」

車椅子を押しながら、アモンは、孔明に話していた。

「嘘?」

「ピアスを壊したのは、私ではなく、あなたが、腕慣らしにしたのではありませんか」

「あぁ、あれですか。お前の腕と、今の私の実力なんて大差ありませんよ。それにしても……」

と言って、孔明は、クックックッと笑った。

「どうかされましたか?」

「いや、欄の弱点が、相変わらずなので、可笑しくなっただけですよ」

「弱点?アイツにそんなのがあるんですか」

「ありますよ。アイツの弱点は、情にモロイということです」

「情?」

「幼い頃のトラウマですよ。欄は、親と死に別れてますからね。愛情などの情に敏感になってしまっているんです。だから、私が車椅子に座ろうとした時に、無意識に体が動いて私を助けた。私が、抱き寄せても、抵抗すらしなかった。甘いですねぇ」

「……そこまで計算されていたとは」

「欄を取り戻すのなら、どんな手でも使いますよ。とりあえずしばらくは、欄の前では、昔の鱗孔明でいましょう。私の体(義足、義手)もだいぶ動きに慣れてきたみたいなので、また違うリハビリに移ります」

「恐ろしい人だ、あなたは」

「私がですか?恐ろしいのは、私ではなく、欄ですよ。私をこんな男にしあげて、そして、仕込めばまだ未知数の可能性を秘めてますからね。組織に必要な人材ですよ」

「あなたにも、ね」

アモンが言うと、孔明は、ニヤリと笑い遠くを見つめた。



−おわり−