加納欄の奪還 シリーズ25

「ケイ、お前の実力は見させてもらいましたよ。お前はいりません」

目線をケイに移し、冷たく付け離す師範がいた。

この人は、昔から変わらない。

使えないと思ったモノは、容赦なく切り捨てるのだ。

行き場の無い拾われた孤児は、捨てられない為に、厳しい修行をつんだのだ。

あたしは、師範が親代わりになってくれていたけど、いつ捨てられるかと、内心怯えていた。

「安心しましたよ」


安心?


「お前の腕が落ちてなくてね。落ちていたら、諦めようと思ってたのですが」

師範が、アモンに助けられながら、車椅子から立ち上がる。

あたしの心臓が、また、ドキドキし始めた。

「戻ってきなさい、欄」

そう言って、右手を差し出した。

あたしは、その右手を見つめた。

子供の頃、よくこうやって差し延べられた手を、握り返していた。

あたしに武術を全て教えてくれた師範。

小さい頃は、その手を必死に掴んだが、今のあたしは、掴むことは出来なかった。

「すみません、師範。あたしは、ここで、自分の生き方を見つけたんです。あの頃の、師範にすがりついているあたしは、いなくなったんです。師範が求めているあたしは、何の役にもたちません。あたしは、師範の思うようには、生きたくないんです」


……殺らなければ、殺やられる。


相手は、師範だ。


車椅子の登場も、油断させる演出のひとつだろう。

あたしは、師範と闘う為に、距離を計った。

そんなあたしの様子に気づいたのか、師範は。

「お前と争うつもりはありませんよ」

と、言うと、アモンに何か命令をすると、アモンは師範のコートを脱がせた。


!!!!!!!


師……範……。


あたしは、師範を見て、言葉を失った。


どうして……い……つ……。


師範の左手が、見えていないといけない場所から見えていなかった。

「あの爆発の時に、失いましてね。ついでに言うと、左足も膝からないですよ」


左手……?


なんで?


まって……なんで……?


師範が……こんな……。