加納欄の奪還 シリーズ25

そして車に乗り込むと、あたしは、マンホールの中へ体をうずめて行った。

その後に、男が下りて来た。

下水道の特有の臭さが、鼻についた。

「祥子さんは、無事に返してくれるんでしょうね。じゃなかったら、あんた張り倒して、帰るわよ」

「あの機械が正常に作動してれば、いつかは見つかるだろ?他にはナイだろうな。そんな小細工はしないと思ってたけどな」

「あれはただのお守りよ。先輩が持ってけって、渡してくれたの」

「守備は?」

あたしの答えを無視し、男は、更に下りて来た男に声をかけた。

祥子さんに、ナイフを向けていた男だった。


と、いうことは、車の中には、祥子さんと運転手のみ?


もしくは、+α(-.-)


「運転手は、あなた達の仲間なの?」

あたしは、真っすぐに伸びている下水道を歩いていた。

とにかく、早くここから出たかった。

「何を聞き出したいんだ?」

「何をって、聞きたい事は沢山あるわよ。目的は何?黒幕は誰?私達の素性を知ってるってことは、私達も知ってる相手って考えていいのかしら?祥子さんを人質にすれば、私達が手を出せないって、随分と確信犯じゃない」

男達は、無言で歩き続ける。

さらにあたしは続けた。

「イチとシンとさっきの運転手は、金で雇っただけなのよね?だから、祥子さんが無事に保護されても、何もあなた達の事が知られる危険性がないとふんでるようだけど、甘いわよ。車が盗難車だろうが、痕跡を残してないと思ってようが、うちの警察署をナメないことね」

何でもいいから、会話がしたかった。

情報がないのだ。

向こう(犯人側)ばかりが知りすぎている。


まさかとは思うけど、内部に犯人と繋がってる人がいる。なんてことは、ナイよね(__)


「お前、強いんだって?」

突然、ナイフを持ってた男が、話しかけてきた。

今は、あたしの後ろを歩いていた。

「やめろ。先を急ぐんだ」

私の前を歩いている男が、後ろの男を制した。

「……強いって、例えば、あなたをのしちゃうとか?」

挑発してみた。

「人は見掛けによらないけど、あなた、見掛け通り、弱そうだもんね」

あたしは、わざと振り向いて話す。