加納欄の奪還 シリーズ25

あたしは、その言葉に、軽く咳ばらいをした。

話し掛けようとした時に、反対側の横断歩道に、祥子さんが、現れた。

あたし達は、思わず身構えた。

祥子さんの両サイドに、全身黒スーツ黒コートの、長身の男が2人立っていた。

「アイツラ(電話してきた奴)か?」

「違います。シンでもイチでもありません」

初めて見る顔だった。

また、金で雇われたのだろうか。

祥子さんは、見た目外傷はないように見受けられたが、表情はやつれていた。

「祥子さん……」

あたしは、小声でつぶやいた。

向こうが、祥子さんを連れて、横断歩道まで来た。

あたし達も、同じように、横断歩道に向かった。

何の言葉もない。

ただ、向こうがする事と、同じようにするしかない。

この人込みだ、何か言葉を発せられても、聞こえるわけがなかった。

信号が、赤になった。

「大山先輩」

「ん?」

「祥子さん、お願いします」

「心配すんなって」

万が一を考えて、鮎川さんが、祥子さんを病院へ連れて行けるように、車で待機していた。

信号が、青になり、お互いが、歩いた。

あたしは、祥子さんを見つめながら歩く。

祥子さんも、あたしを見つめながら歩いていた。

2人の距離が近づく。

3㍍ほどになり、あたしは祥子さんに声をかけた。

「祥子さん!大丈夫でしたか?怪我してないですか?大山先輩が、待機してますからね」


距離2㍍。


1㍍。


すれ違う瞬間に、あたしのお腹に、硬いものが当たった。


!!!!!!


祥子さんっっ!?


あたしは、祥子さんに、拳銃を、突き付けられていた。

思わず立ち止まってしまった。

「祥子さんっ!」

「黙って!欄がちゃんと向こうに行かないと、無差別で一般人殺すって、言われてんのよ!」


やっぱり(-_-メ)


そんなことだろうとは、思ってたけど。


卑怯者(__)


「祥子さん、私は、ちゃんと行きますから、せめて祥子さんは」

「あたしと欄が戻ることが、一般人に、手を出させない取引なのよ」


そんな!!