加納欄の奪還 シリーズ25

一瞬にして、命を奪う道具なんて、この世から無くなればいいのだ。

拳銃なくたって、この世は、生きていけるし、犯人だって逮捕出来るのだ。

ロッカールームから出ると、署内の公衆電話に向かい、ある人物に電話をし、あることを依頼した。

話し終わると、あたしはまた、皆がいる場所へと戻った。

「すみません、用意出来ました」

あたしの声に、皆が振り向いた。

「その格好で行くのかい?」

吉井さんに言われたが。

「はい。ある程度動きやすいほうが」

と答えた。

大山先輩が、チラッとあたしの腿を見たが、無視をした。

大山先輩も、何も言わなかった。

「そろそろ行きます」

下見兼ねて早めに出ることにした。

管轄が違うため、S署にも報告をし、応援を頼んでいた。

そこは課長の、腕の見せ所である。

「欄ちゃん、これ」

苫利先輩が、慌てて、あたしにある物を手渡した。

黒いカチューシャだった。

「ごめん。まだ、ピアス完成してなくて、とりあえず、これも、前に作った発信機内蔵なんだ。性能にこだわりすぎて……」

苫利先輩が、話すのをやめてしまった。

あたしは、受け取ったカチューシャを見て。

「ここ、ですよね」

と、飾りなのか、ゴミなのか、発信機を1発で見抜いた。

「う、うまくごまかしてくれよ」

苫利先輩が、慌てた。

「……ありがとうございます。使わせて頂きます」

「欄君、なんなら、警棒持って行くかい?」

鮎川さんが、言った。

「警棒、ですか?」

「何か、身を守る為に必要だろう」

「ありがとうございます。でも、すぐに取られちゃいそうなんで」

あたしは、丁寧に辞退した。

皆がさりげなく、気を遣ってくれているのがわかる。

しかも、祥子さんを目の前でさらわれた事に関しては、誰も非難しない。

あたしは、こんな仲間に甘えさせてもらいながら、仕事をしている。

だからこそ、今回は、全責任自分で取るため、冷静な判断力と冷酷な心が、必要なのだ。


すべき事はひとつ。


あたしは、頭の中で、も一度唱えた。