加納欄の奪還 シリーズ25

とにかく、祥子さん救出まで、後3時間、やるべきことはやっておかないと。


「おい、ピアスどうした?」

「前に壊れて、そのままです」

大山先輩に聞かれて、あたしは答えた。

発信機付きのピアスは、前に襲撃を受けた時に破壊され、苫利先輩に報告をしたが、その後、苫利先輩も何かと忙しいらしく、新しいピアスは、届いてなかった。

「アイツ何してんだよ」

大山先輩が、文句を言ったが、あたしは、まぁまぁと、大山先輩をなだめた。

「欄、いつも言ってる事だけどなぁ。一人で突っ走るんじゃねぇぞ」

毎度のお説教が、始まった。

「わかってますって。今回は、祥子さんの救出が第一ですから。無事に交換してみせますって」

おどけて、言ったわけではなかった。

大山先輩の顔を見たら、マジな顔付きをしてあたしを見ていた。

「……大丈夫ですよ。祥子さんは、必ず、取り戻しますから。高遠先輩と、待ってて下さい」

「お前の心配してんだよ」

「…………」

なんて答えればいいのかわからなかった。

そして、大山先輩は、優しく無言で抱きしめてくれた。

あたしは、自分から、大山先輩と離れると、ロッカールームへ歩いて行った。

顔が赤くなってるのがわかった。

でも、いまのあたしに必要なのは、冷静な判断力と冷酷な心だった。

ロッカールームの鏡を覗き込み、自分の瞳だけを、見つめた。


スベキコトは一つ。


祥子さんの救出のみ。


あたしは、気持ちが落ち着いたことを確認した。

ロッカーの奥に隠している箱を取り出し、中から細革のベルトを取り出し腿に巻き付け、細長い短剣をベルトに挿していった。

そして、長ズボンから膝上の短いパンツにはきかえた。

膝上でも、この長さだったら充分に短剣は隠れた。

これは、武器は何も持ってないよ。と、多少印象付けるには有効。


確認されたらアウトなんだけどね(__)


確認されないことを祈りましょう。

小型ナイフを1本袖口に隠し、テープで固定した。

その上に、グレーのパーカーを羽織った。

戦闘準備は整った。

拳銃は言われた通り持って行かない。

だいたい、あたしは拳銃は苦手だった。