腕に感じる。人の温もり。
「…ちょっと…陸!?」
「なにしてんの!?」
あたしを。捕まえてくれた。
吉濱の手が、あたしを見つけてくれた…。
…離れた手と腕は、吉濱がまた繋いでくれた。
あたしの腕をしっかり掴んで。引き寄せてくれた。
「陸!早く離してよ!」
「そうよ!……よりにもよって何で神田さんと…」
「何で神田じゃ駄目なんだよ。」
吉濱が女子の訴えを遮った。
「……え」
「俺が神田をどうしようと俺の勝手だ。俺は神田を傍に置きたいから置いてんだ。」
嬉しかった。
あたしだけが傍に居たい訳じゃ無いって分かったから。
胸のイライラが消えた気がした。
「…………そんな…。陸は、神田さんが好きなの…?」
普通の人ならそう捕らえるだろう。
こんなまるでカレカノみたいな振る舞い。
…でも、あたしが病気だから
だから、吉濱は気にしてくれてるんだとおもう。
「…俺は、神田の事大切にしたいと思ってる。…出来る限り傍に居たいんだ。」
「……それって好きって事?」
「…………さぁな。」
意味深な言葉を残して。吉濱はあたしを引っ張って教室を出てくれた。
多分、気を使ってくれたんだ。
ただ無言で、二人でゆっくり歩く。


