【先生】
――――ガラガラ…
「…………………」
さっき彼女が言った言葉を、思い出す
『……先生は心から、あたしを心配してないですよね?』
「はぁ~…………」
……彼女は、いつもそうだ
なんとも的確で、残酷な言葉を僕に投げつけてくる
「…………なんだかな~…」
…………さっきの質問に、僕は何て返せば良かったんだろうか
『そんなことない』
『心配してるに決まってるじゃないか』
…………そうは言えない。
彼女が言った通り、
心からそう思わなかったから
嘘でもなんでも、
この立場にいるかぎり…………患者に対して言わなければならない言葉ってのがある
でも……………………
嘘をついて適当な答えを言ったら、彼女はきっと呆れるだろう
何もかもを見透かしたような目が、嘘を許さない
だから、嘘なんかつけなかった
じゃぁ…………どうすればいい?、
それが、僕は分からなかった
黙っているしか…なかった
「……………………」
…彼女が言うたった一言に
僕は何も叶わない


