「正樹、高校は同じだろ?」


「あぁ。………って、俺は陸だけど?」

「は?」


「ははっ!誰だよ正樹って!間違えんなよな~!」





俺が笑いながらそう言うと、直人は意味が分からないといった顔をした。







そういや、ばあちゃんも俺を正樹って言って………たっけか?






いや、何かの聞き間違いだろ。






「………正樹…?」


「だから誰だよそれ。」



「…………何で?お前、正樹じゃねぇのかよ?」





…………きっと久しぶりだから、誰かと間違えてんだな…






「俺は吉濱 陸だぞ?」



「おい正樹。………冗談やめろ。」



「あぁ?」






正樹。正樹。正樹………






うるせぇよ………




俺は正樹なんかじゃねぇ………っ。







「………正樹…」



「止めろ。」



「だってお前は…」


「止めろっていってんだろうが…!」



――――『正樹』



…その名前を、聞きたくなくて。







「………………っ」


「二度とその名前を口にすんな」






思わず直人の胸ぐらを掴んでしまった手は、あり得ないくらいに力がこもっていた。






………………くそっ…






俺は何にこんなにビビってんだよ………………