翔が話すと、クラスが明るくなる。
どうやらクラスのムードメーカーのようだった。

なんだかアットホームな空気が慣れていないせいか、落ち着かない。

「……ホントに居ないから」

これ以上かまわれるのも嫌で、郁弥は俯いた。
これで話を終わらせようと、授業の用意を始める。

「あ、授業始まるけんね。私らも用意せんと」

女の子たちは時計に目をやり、呟いた。
パタパタとシューズが音を立てる。

翔が和ませた空気が、郁弥のせいでどことなく浮ついてしまう。
でも郁弥にとってそれは好都合だった。
そうやって皆、自分に関わらなくなればいい。