猫になった僕

僕の銀色の耳がピピッて動いた。

「逆さま・・・、逆さまなの?」

僕は、あわてて拓也君にそう言った。 ☆

「だいたい正解だね。」

三毛猫拓也君は、テーブルの上にちょこんと座り直して僕にそう言った。

「でもね、しま猫たっちゃんも、ヒロ君の言ってることはだいたい分かっているみたいだよ、黒猫和美さんは言ってることの、ほとんどわかってるみたいだし。」

「だけど二人共、言葉は話せなくて『にゃー』としか言えないけどね。」

「逆さまなんだ、逆さま・・・。」

僕はやっとわかった答えを忘れないように繰り返して言ってみて、繰り返し言ってみて気が付いた。

「じゃあ、どうして僕は拓也君とお話しできるの!」

「だろ、やっぱり不思議だろう。」

拓也君は目を、まあるくして僕にそう言った。

「大抵は逆さまなんだよ大抵はね、だからはじめにヒ
ロ君は珍しいって言ったろう。」

拓也君は首をひねってそう言った。

「でもヒロ君、一つわかったことができたね、一つ一つ考えていけばいいんだよ、そしたら今にきっとみんなわかるようになるさ。」

拓也君は優しい目で僕のことを見ながら言った。
でも僕は、僕は一つわかったけどまだまだわからないことばっかり。
ほんとに知りたいことはまだぜんぜんわからない。
僕は一個わかってうれしかったけど、とっても不安な気持ちでいっぱいだった。
だけど、拓也君は一個一個考えればいいって言ってた。