猫になった僕

「びっくりしたかい、ヒロ君。」

僕はまだびっくりしていて声が出なかったので、ひげをキュッと銀色のほっぺにつけたままうなずいた。

「びっくりするよね。」

自分のことを拓也君って言ってる三毛猫さんが今度は、まあるい目で僕のことを見てそう言った。
拓也君は、僕よりも年上のお兄さん。
僕があおぞらに来た時にはもう拓也君はあおぞらにいた。

拓也君は、お話が出来ない。

お話が出来ない代わりに大きな声を出したり、戸をたたいたりして合図しているんだってマリお姉さんが教えてくれたことがある。

「三毛猫さんは、本当に、本当に拓也君なの。」

「本当だよ、僕は拓也だよ。」

「でも、でも、でもね拓也君は・・・。」

僕はうまく言えなかった。

僕が言いたいことを言ったらもしかしたら拓也君が悲しい気持ちになるかも知れないから。

「拓也はお話が出来ないって言いたいんだろう。」

三毛猫さん、ううん、拓也君?は僕が思っていたことをまた言い当てた。

そうなんだ、そうだよね!拓也君はお話ができないよね、でも三毛猫さんの拓也君は僕とお話をしているよ。

僕はとっても不思議な気持ちになった。

「ヒロ君、不思議に思ってるね。」

「でもヒロ君、僕には君の方が不思議なんだよ。」

三毛猫の拓也君はなんだかまた難しいことを言ってる。