【短】この猫知りませんか?





「それで結局あの日から顔を合わせないまま、お兄ちゃん死んでしまって」



「後悔とかしなかったの?」



「もう後悔しかしませんでしたよ。笑 でもお兄ちゃんからの手紙読んで更に後悔したんです」



「手紙・・?」



「残しててくれたんです。私、お見舞い行かなかったから。中読んでみると、ほとんど誤ってばっかの文ばかりで。『こんなお兄ちゃんでごめんな。』とか『お兄ちゃんらしいことできなかった』とか。・・・・でも最後に『もっと桃子と話したかったな、勉強だってたくさん教えてやりたかった』って。・・・私のくだらない嫉妬がこんなにお兄ちゃんを悩ませてたんだって、こんなに大切にされてたんだってようやく気づいたんです。もう戻れないんだって手紙読みながら号泣しちゃいました・・・」



「・・・そっか・・」




北島先輩は私の話聞いて、あぐらをかき、腕を組んでまた俯いてしまった。




「す、すいません・・・。どーでもいい話ですよね。笑 でもなんか話ときたくって」




「アンタ、この後時間ある・・?」



「えっ?」




あわてて腕時計を見ると、もう短い針が門限の6時をささそうとしている。



空ももうオレンジ色に染まっている。



「ぅぅん・・・。はいっ!・・・・大丈夫ですっ」