「・・・お姉ちゃんいるんですか?」
「え・・?あぁ、まぁいるけど」
「実は私にもお兄ちゃんがいたんです」
「・・・いた?」
「はい。もともと体弱くて。私大好きだったんです、そのお兄ちゃんのこと。よく私とお母さんが病院にお見舞いに行ってたんですけど、いっつも笑ってその日に病院でおきたことを楽しそうに話してくれたんです。だから私お見舞いに行くのがいつも楽しみで。・・・でもお母さんはお兄ちゃんのことばっか心配してて、私のことそっちのけで。だから一時期お兄ちゃんのことをすごく憎んだんです」
「嫉妬か」
「ふっ、まぁそうですね。まだ小学五年でしたから、私。私の学校で描いた絵が賞をとったときも『お兄ちゃんも描けたらいいのに』って言ったんです。それでしびれきらしちゃって。ある日お兄ちゃんに『お兄ちゃんなんかいなきゃよかった』って叫んじゃったんです。まぁ当たり前ですけどお母さんにすっごい叱られて」
「・・・うん」
「先に言うの忘れてましたけど・・・私のお父さん、私が生まれてすぐ亡くなっちゃってて、誰も甘える人がいなくてずっと自分の部屋に閉じこもって、お見舞いにもそれ以来行かなくなったんです」
気づいたら私はどんどん話しだしていた。
もう貴方のことを知れないなら、
今度はこの人に自分のことを知ってほしかった。


