ルージュの森の魔女


王宮の食事は本当に豪華なものだった。

長方形の長いテーブルには十皿を超える肉や魚のメインディッシュが並び、色とりどりの新鮮な果物はお付きの侍女が一口だいに切り分け皿に盛り付けてくれる。 中でも高級食材であるローデン産の牛肉を赤ワインで柔らかく煮込んだビーフシチューは美食家(自称)でもあるアリーナの舌を大いに満足させるものであった。

レオドールに必死の形相で止められるまで十分に食した彼女は今は一人広大な中庭を散歩している。

初冬の夜風は冷たく、厚地のガウン無しでは中々厳しいものがあるのだが、当の本人はまるで寒さなど関係ないかのように薄地のドレスのまま歩いていた。

「この季節にそのお姿のまま出歩いては風邪をひかれてしまいますよ?」

そんな彼女に声をかける人物が一人……。

ふと後ろを振り返るとユーリッヒが朗らかな笑みを称え立っていた。
レオドールたちとの話し合いが終わったのだろう、手にはしっかりと厚地のガウンが握られており、それをアリーナの白い肩にふわりとかける。


「…お心遣い感謝致します。でも、ご心配には及びませんわ。私、ちっとも寒くありませんの」

そう微笑むアリーナの身体は淡い光に包まれている。防御魔法を用いて冷たい風を防いでいるのだ。
ユーリッヒは感心したように目を見張った。

「なるほど、魔術ですか。いやはや魔術は便利ですねぇ」

「ユーリッヒ様は魔力を持ち合わせていないのですか?」

「残念ながら、私には魔力が一欠片も無いのですよ」
肩をあげ苦笑するユーリッヒは、次の瞬間なにかを思い出したかのように瞳を輝かせた。


「そうだ、ぜひ貴女に見ていただきたいものがあるんです。一緒にきて頂けませんか?」

「ええ、喜んで」

差し出されたユーリッヒの手にアリーナはゆっくりと自分の手をのせる。
夜の庭は暗くよく見えなかったが、道に備えられた外灯が二人の行き先を明るく照らし出した。




「さあ、着きました。ここですよ」




「……これ…は――」







小さく息をのむ音が聞こえる……。

目の前に広がった光景にアリーナはただ言葉を失うのだった。