「アシュベル皇帝は命の恩人である貴女にたいし何も恩返しができなかったことを悔やんでいたのですよ。その証拠として皇族しか立ち入ることのできない書庫に彼直筆の書記がございましたわ。そこには『我と同じ力を持った血筋の者よ、もし彼女が今も生きているならばどうか彼女の力になり、彼女を助けてほしい。我が成し遂げることのできなかったこの願い…どうか果たしてくれ』とそう書いてありましたわ」
「そうでしたか。だから皇女様も同じ目をなさっているのですね」
過去を懐かしむように細められた紫紺の瞳が宝石の如く輝くブルーサファイアの瞳をとらえる。
それは紛れもなく『蒼き瞳の獅子』と呼ばれたかの少年の瞳だった。
きっとアマルダ皇女も彼と同じく桁違いの魔力をその身体に宿しているのだろう。だから彼の残した秘密の書記を読むことが出来たのだ。
アリーナは一人納得するとそこへ第三者の声が割り込んできた。
「おやおや、マイハニーはこんなところにいたんだね。どこを探しても見当たらないから城中歩き回ってしまったよ。…うむ?ここの部屋はもともと扉がついていなかったかな?」
まるでその場の雰囲気を一気に崩すかのような、のほほんとした声音が部屋に響く。
見ると扉の消えた入り口から貴族の格好をした長身の男が入ってきた。
「ユーリッヒ!」
アマルダ皇女の高らかな声が男の名前を呼ぶ。
一気に花開くように微笑むと彼女は彼の胸元へと飛びこんでいった。
いきなり飛びついてきた愛しい人をユーリッヒはしっかりとその腕で抱きとめる。
端から見ればその光景はどこにでもいるような幸せそうなカップルだった。
「ユーリッヒ!私を探していたのね!ごめんなさい、ここの扉私が壊してしまいましたの」
たくましい首に抱き着いたまま謝る彼女にユーリッヒは優しく微笑みかける。
「あはは、相変わらず《オチャメ》だな〜マイハニーは☆」
「……兄上、オチャメという問題ではございません。そして語尾に☆をつけないでください」
やはり、普通のカップルではないようだ。
疲れたように眉間に手をおくレオドールに彼はくすりと笑みをもらした。
