「皇女様、お手をお離しください。彼女が死んでしまいます」
危うく死にかけるところだったアリーナはレオドールの制止により命びろいをする。
その細い身体のどこにあのような力があるのだろう。
人間とは思えない馬鹿力にアリーナは地味にむせこむのだった。
「うふふ、ごめんなさい取り乱してしまって……。私はロスベニア帝国 第一皇女 アマルダ・シュノー・ ロスベニア です。貴女にお会いでき光栄ですわ…アリーナ・ゼノクロス様」
改めて居ずまいを正したアマルダ皇女は皇族らしく完璧な動作で挨拶をする。
そんな彼女にアリーナは苦笑した。
「一介の魔女にたいし皇女様が敬称で呼ぶ必要はないのですよ?」
「まあ!そんなことはございませんわ!アリーナ様がいなければ帝国は500年前に《滅亡》していたのですから」
衝撃的な言葉にレオドールたちは絶句する。
「それは一体どういうことですか?」
「500年前帝国を乗っ取ろうとした貴族がいて、その者たちが唯一の後継者であるアシュベル皇太子を暗殺を目論んだのは知っているかしら?」
「あの有名な《アシュベルの政変》ですね?」
すかさずルイスが口を挟む。
「ええ、そうよ。その時代皇族の権力は衰退する一方で実質、政権は貴族たちが握ってたも同然だったの。その時アシュベル皇太子を亡き者にしようと企んだ者たちから彼を助け、皇族の手に再び政権が戻るようにしたのはアリーナ様ですのよ」
「…っな!もしそれが本当ならアリーナは帝国を救った英雄じゃねぇか!」
「しかし…、歴史書にはそのような事実は一言も書かれていませんでした。それどころかアリーナさんの名前さえも……」
レオドールたちの複雑な視線に、アマルダ皇女は悲しそうに睫毛を伏せる。
それをアリーナの透き通る声が遮った。
「皇女様が悲しまれることではございませんわ。これは私が望んだことです」
静かに…何かを堪えるような面持ちで微笑むアリーナにレオドールたちはそれ以上何も言えず押し黙る。
「でも、変ね。ここを去る時、私のことに一切触れないという約束だったのに、何故皇女様がそのことを知っているのかしら?」
一人考えこむアリーナにアマルダ皇女は優しく微笑みかけた。
