ルージュの森の魔女


「アリーナ!着替え終わったか!?」

バーーーンと音をたて隊服に着替えたジンが勢いよく乗り込んでくる。
しかし彼は目の前の光景を見たとたん思わず口をあけてその場で硬直した。

「まあ!ジン様、女性の部屋にノック無しで入るのは失礼極まりないですよ!」
憤慨した様子でキリエがジンを叱責すると慌てて我にかえったのか「ごめん、ごめん」と謝る。

「それにしても本当に美人だな、アリーナは!入ってきた時はびっくりしたぜ!」

そう笑顔で褒め称えるジンも白を基調とした生地に金の刺繍を施した隊服がとてもよく似合っていた。
軍の中でも第一部隊しか着ることができないそれは清楚感と気品にあふれ、ジンの端正な顔立ちをより一層際立たせている。

「そういえばレオとルイスはどうしたの?」

ふと、いつもいるはずの二人がいないことに気づいたアリーナは一人で先にやってきたジンに問いかけた。

「ああ、二人ならそろそろここに来ると思うぜ?」

ジンはニカッと悪戯っぽく微笑むと、同時に扉がノックされる。



「どうぞ」とキリエが声をかけると開いた扉からレオドールとルイスが入ってきた。


「――失礼する。アリーナ、支度はす……」

思わず言葉を失うレオドール。
不審に思ったルイスも視線の先をみると唖然とした表情でアリーナを見つめた。
「あら、レオたちも着替え終わったのね。どうかしらこのドレス。少し大人っぽいような気がするんだけど…」

「まあ、そんなことはありませんわ!とてもよくお似合いです。むしろこのドレスはアリーナ様のために作られようなものですわ!」
熱く語るキリエに、後ろで控えていた侍女たちも力強く頷く。
たしかにアリーナの瞳の色に合わせたライラック色の細身のドレスは彼女にとてもよく似合っていた。
顔にはうっすらと化粧をひき、髪型は一部を真珠のピンでとめ、軽くウェーブがかった髪はそのまま後ろに流している。

一見シンプルな装いだが、かえってそれが彼女の魅力を最大限に引き出していた。