ルージュの森の魔女


「……それで、これからどうするの?」

前を歩くレオドールにアリーナは声をかける。

「そうだな…。とにかく俺たちもこの格好では誰とも顔合わせできないから着替えるのが先だ」

「あら、じゃあお風呂に入れるのね?よかったーここ最近まともに入ることが出来なかったから楽しみにしてたのよね〜」

そう言いながら喜ぶところはやはり女の子なのだろう。
レオドールはふっと微笑み、たまたま通りかかった侍女を呼びとめようとする………が、



「…そんでお風呂から上がってさっぱりしたら美味しいものをお腹いっぱい食べ『止めろ!それ以上言うなっ!!』」


――前言撤回。

レオドールは慌ててアリーナの言葉を遮ると、困惑している侍女に彼女を押し付け、客室への案内とお世話を頼んだ。

侍女も慣れているのか丁寧な身のこなしでアリーナを客室に案内する。
案内された客室は落ち着いた色で統一されており調度品から細部に至るまで品の良さをうかがえた。

「ここは素晴らしい部屋ね」

アリーナは素直な感想を述べると侍女は朗らかな笑みを浮かべる。

「はい、ここは前王妃様がお客様が落ち着いて過ごせるようにと調度品から壁紙にいたるまでデザインしたお部屋でございます。きっとおくつろぎ出来ると思いますわ」

キリエと名乗ったこの女性は20歳とは思えないほど落ち着いた物腰をしていた。


「そう言えばここはネコを入れても大丈夫かしら?」
ふと思い出したアリーナは足元をくっついて歩いてきたクロードを抱き上げた。

「まあ!可愛いネコさんですね!大丈夫ですよ、お客様のネコであれば」

クロードは「ニャア!」とめんどくさそうに鳴くとアリーナの手を離れ椅子の上で丸くなる。
どうやら少し疲れていたようである。
その様子にキリエはくすりと笑みをもらすとアリーナに向き直り花のような笑みを浮かべた。

「それでは私は何人か他の侍女も呼んで来ますね。少しお待ちくださいませ」