帝国の強さの象徴でもある王宮――ルスティ二ア宮殿はその名に恥じぬ如く荘厳で美しい城だった。
細部にいたるまで施された彫刻は流麗な線を描き、所々に品よく置かれた美術品も決して豪奢ではない。 何処よりも高いその城は帝国が誕生して約5000年たっても少しも衰えることはなくむしろ威厳をもってそこにそびえ立っていた。
門番に証明書を見せ王宮内に足を踏み入れるとアリーナは感嘆の声を上げる。
「――まあ…!
前とちっとも変わってないわね!」
「…おい、それ本当に感心してるのか?」
思わず突っ込むジンだが、隣で聞いていたルイスが不思議そうに問いかける。
「…前、というとアリーナさんは昔ここにきたことがあるのですか?」
「ええ、もうかなり昔のことだけどね」
何やら意味ありげに微笑むアリーナに首を傾げるも、突き当たりに飾ってある肖像画を見たとたん彼女は驚いたような表情をした。
「あら?これロイの作品じゃない!」
額の前で目を輝かせるアリーナに恐る恐るレオドールが訪ねた。
「…おい、もしや世界最高峰とも言われた宮廷画家ロイ・シューマン・ボルトを知ってるのか?」
「もちろん!だってこれ《私》だもの!」
「「――えええっ!!」」
嬉しそうに額の中の女性を指差すアリーナに落雷のような衝撃がその場に走る。
「…だってこれ500年前の作品だぞ!?」
「たしかに作品の女性とそっくりですが……」
「いくら何でもあり得ないだろ」
三人は口々に述べると、額の中の人物と目の前に立つ少女を見比べる。
少し額の中の人物の方が大人っぽく見える気がするが、宮廷画家ロイの代表作ともいえる『月夜の貴婦人』はどこをどう見てもアリーナ本人だった。
「まさか私もこれがここにあるとは思わなかったわ。――さ、どこに行くのかわからないけど早く行きましょ」
少し論点がずれてる気がするが、言うだけ言うとアリーナは一人先を歩き始めた。
「――彼女に常識を求めては駄目ですね……」
「ああ、今俺もそう考えてた……」
三人はため息をつくと、アリーナに迷子になられても困るので急いで後を追いかけるのだった。
