「…おい、レオドール。先ほどからちらちらと奇怪な視線を感じるのだが……、フードは被らなくてもいいのか?」
クロードの指摘にはっと我にかえったレオドールは恐る恐る自らの頭に手をおいた。
そこにフードはなく、ふさふさと自分の柔らかな髪の手触りが………。
「ちょっと、レオ。どうしたのよ」
一気に青ざめたレオドールにアリーナは不審げに問いかけた。
それでも黙ってるレオドールにアリーナは再度問いかけようとするといきなり黄色い声がそれを遮る。
「…ねぇ、あそこで叫んでるのレオドール様じゃない?」
「あっ!ホントよ!レオドール様だわ」
「キャーー!レオドール様ァァァ!!」
「まずい!!逃げるぞ!!!」
言うが早いかレオドールは脱兎の如く広場を立ち去る。
何が起こったのかわからないがアリーナたちもその後をつけていった。
しかし、そのまた後ろのほうで「ああ〜ン!レオドール様ァァ!お待ちになって〜〜!!」と叫ぶ声が聞こえてくる。
尋常ではない雄叫びに思わず後ろを振り向けば、街中の乙女たちが広い道を埋め尽くして追いかけてきていた。
その兎を追うトラのごとく殺気迫った様子にジンは耳まで青ざめる。
「どーすんだよ!このままだと追い付かれるぞ!!」
「うるさいっ!もとはといえばお前たちのせいだぞ!」
恋する乙女の恐ろしさを数えきれないくらい体験したレオドールは今度こそ己の死期が近いこと悟ったのだった。
