ルージュの森の魔女


レオドールたち一同はルージュの森を抜けると一週間かけて帝都――ベルクハーゲンに到着した。

さすが天下の都なだけあって、行き交う人々の賑やかさは他と比べようがない。様々な国からやって来た行商人が幅広い道中に軒やを連ね商売を行っている姿はまさに商業の都と呼ぶに相応しかった。



「――相変わらず、ここは賑やかだな…」

久々に帰ってきた馴染みの場所にレオドールはフードの下で軽く微笑む。

「そうですねー。皆さん明るく元気があって……、――胡散臭いの貴方だけですよ?」

涼しい顔してそう毒をはくルイスは、まるで先週出会ったフードの男のごとく怪しい格好をした隣の男に、呆れた視線を投げ掛けた。


「仕方ないだろ。ここでは私の顔は割れてるんだ。――それに、脱いだら恐ろしいことになる……」

「美しすぎるのも罪になるとはこういうことを言うんですかね?まあ、どうでもいいですけど、私まで変な視線を向けられるのは御免ですねぇ」

「…ルイス。それが親友のいう言葉か……?」


容赦のない辛辣な言葉にレオドールは軽く項垂れたがそこでふといつもいる気配が無いことに気づいた。

「……おい、ジンとアリーナは何処に行った……?」

恐る恐る聞く様子にルイスはここぞとばかりため息をはく。

「今さら気づいたんですか?やですねー、視界が狭いと不便が多くて」

「そこでイヤミを言うな!なんで気づいてたならすぐ言わなかったんだよっ」

「今度は八つ当たりですか?さっき『いいニオイがする』とかいってこの街に入ったとたん二人して姿を眩ましましたよ」

「…っな!?それを早く言えっ!」

そう捨て台詞を残し、風のように疾走するレオドールにルイスは呆れたように呟いた。




「…全く、あれではフードを被った意味が無いじゃないですか」