ルージュの森の魔女


「――ふふふ…、気づいておられましたか」

酷く耳障りのする笑い声とともに暗闇から全身黒いマントを羽織った三人の人物が浮かび上がる。

先ほど声を出したのは真ん中の人物のようだ。

顔は深くフードを被っているため見えないが、月光に照らし出された口元は厭らしく歪んでいた。

「お前らは《ダークフィア》か?」

レオドールの問いかけに男は不気味に笑う。

「左様、まさか帝国軍がそこまで嗅ぎつけるとは思ってもみませんでしたなぁ。まぁ、我々にとってどうでもいいことですが……」

まるで帝国を馬鹿にしたかような言い方にルイスやジンはより一層眼光を鋭くした。そんな中、アリーナは紫紺の瞳を細め、妖艶に男に微笑みかける。

「……それで、あなたたちは私に何のようかしら?」


「おや?てっきりそこの若造から聞いているかと思いましたが、まあいいでしょう。……麗しき漆黒の魔女様、ぜひ我々の探し物にご協力して頂きたいのです」
下卑た微笑みで恭しく頭を下げる男にアリーナは不信感を覚えながらも再度問い返す。

「……その探し物とは?」
男はゆっくり顔を上げるニヤリと口角を上げた。



「…はい。それは――

伝説の秘宝、ダークライト(闇光の宝珠)

でございます」










――瞬間、息をつくことさえも許されないような圧力が彼女以外の全てに襲いかかった。